皆さんこんにちは!
Kamikatsu-TeaMateの更新担当の中西です!
さて今日は
未来に繋ぐ阿波晩茶〜episode20〜
湯呑み一杯の向こう側には、1年を通して続く畑の管理、短い収穫期の勝負、そして加工・販売という長い工程があります。近年、お茶農家の現場では、気候・人手・価格・規制など複数の波が同時に押し寄せ、従来のやり方だけでは乗り切れない局面が増えました。本稿では、日本の茶産地を想定しつつ、畑・工場・市場の3視点から課題を整理し、すぐに着手できる打ち手までまとめます。
1|畑で起きていること(生産)
① 気候リスクの増大
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晩霜・春先の寒戻り:一番茶の芽吹きが早まるほど霜害のリスクが上がる。防霜ファンや散水、黒マルチなどへの投資負担が増加。
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猛暑・干ばつ・豪雨:夏場の高温乾燥は樹勢を落とし、旨味成分の蓄積に影響。豪雨は土壌流亡や根傷み、排水不良を誘発。
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収穫タイミングの難化:フェノロジー(生育リズム)の変動で「いつ摘むか」の決断が難しく、品質×歩留まりの最適点が読みにくい。
② 病害虫の圧力と防除の難しさ
③ 労働力の逼迫
④ 土壌・品種・園地の課題
2|工場で起きていること(製造・設備)
① エネルギーと資材コスト
② 小ロット・多規格対応の負担
③ 衛生・安全・トレース
3|市場で起きていること(販売・事業)
① 価格のミスマッチ
② 需要構造の変化
③ ブランディングと越境
4|“明日から動ける”現場の打ち手
畑:気候・病害虫へのレジリエンス
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防霜の多層化:ファン+黒マルチ+簡易風除け、可搬温湿度ロガーで危険閾値を見える化。
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IPM:フェロモントラップ、被覆下の湿度管理、茶園縁の草・樹種の選定で天敵温存。
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土づくり:剪枝くずのチップ化・堆肥化、被覆作物(クローバー・ヘアリーベッチ)で有機物と保水を確保。
労務:繁忙の“瞬発”を仕組みに
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共同雇用プール(近隣数戸でのシェア)、摘採機の共同利用カレンダー。
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収穫〜運搬の動線見直し(斜面にはモノレール・自走運搬車、集積点の固定化)。
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学生・地域人材の短期アルバイトには、30分動画の作業eラーニング+現場チェックリストを準備。
工場:省エネ・多品種対応
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熱回収・断熱・インバータで“燃やした熱を逃がさない”。
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ロットID管理(QR)で生葉→荒茶→仕上げまで紐付け。単品種・単畝でも混乱しない台帳に。
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小規模発酵ラインの試験スペースを確保し、紅茶・烏龍・発酵茶の**“二の矢”**を育てる。
市場:価値の翻訳と販路
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シングルオリジンの設計:区画、品種、被覆日数、蒸しの強弱など**“違いの言語化”**。
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ECの基本整備:淹れ方動画、写真(茶畑・製造・リーフ・水色・茶殻)、2分で強みが伝わる商品ページ。
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観光・体験:新茶期の“摘採見学+製茶見学+試飲”、秋は“焙煎体験”。一次情報の提供はブランド力に直結。
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法人向け:ボトルティー用の抽出適性、抹茶・粉末緑茶の粒度や溶解性などB2B規格表を用意。
5|資金と制度:攻めの投資を可能にする道筋
6|輸出・規格対応の勘所
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MRL・ポジティブリストを市場別に整理し、使用資材と収穫前日数(PHI)を管理表で一元化。
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残留検査・水質検査の証跡を英訳テンプレートで常備。
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バルク・ティーバッグ・粉末など形態別の規格書を用意し、問い合わせへの初動を早める。
7|継承と連携:人が続く仕組みへ
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研修受け入れ(短期)→シーズン雇用(中期)→新規就農支援(長期)の**“階段”**を地域で用意。
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地域工場・共同乾燥など設備のシェアで小規模生産者の参入障壁を下げる。
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若い世代がやりたい直販・体験・デジタルを、上の世代の栽培・製茶の技と重ねる“縦の分業”。
まとめ:課題は重なる。だからこそ“設計”で解く
気候、人手、コスト、市場、規制。どれか一つではなく同時多発で起きています。鍵は、
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データで可視化(気象・生育・防除・コスト・販売)
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標準化(作業・記録・品質)
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分担と連携(人・設備・販路)
の三点を“畑→工場→市場”の一本線でつなぐこと。
お茶は、土地と人の記憶の産物です。違いをつくる畑と、違いを伝える言葉、そして続けられる仕組みが揃ったとき、一本の新茶はようやく未来に届きます。
次の季節に向けて、できることを一つずつ“設計”していきましょう。
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