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月別アーカイブ: 2025年9月

未来に繋ぐ阿波晩茶~episode20~

皆さんこんにちは!

Kamikatsu-TeaMateの更新担当の中西です!

 

さて今日は

未来に繋ぐ阿波晩茶〜episode20〜

 

 

湯呑み一杯の向こう側には、1年を通して続く畑の管理、短い収穫期の勝負、そして加工・販売という長い工程があります。近年、お茶農家の現場では、気候・人手・価格・規制など複数の波が同時に押し寄せ、従来のやり方だけでは乗り切れない局面が増えました。本稿では、日本の茶産地を想定しつつ、畑・工場・市場の3視点から課題を整理し、すぐに着手できる打ち手までまとめます。


1|畑で起きていること(生産)

① 気候リスクの増大

  • 晩霜・春先の寒戻り:一番茶の芽吹きが早まるほど霜害のリスクが上がる。防霜ファンや散水、黒マルチなどへの投資負担が増加。

  • 猛暑・干ばつ・豪雨:夏場の高温乾燥は樹勢を落とし、旨味成分の蓄積に影響。豪雨は土壌流亡や根傷み、排水不良を誘発。

  • 収穫タイミングの難化:フェノロジー(生育リズム)の変動で「いつ摘むか」の決断が難しく、品質×歩留まりの最適点が読みにくい。

② 病害虫の圧力と防除の難しさ

  • チャノミドリヒメヨコバイ、小さなハマキ類、カンザワハダニ…。高温化で世代回転が早まると防除回数が増え、耐性化リスクやコストが上昇。

  • 有機・特別栽培では選べる資材が限られ、草生管理や天敵温存など**総合的病害虫管理(IPM)**の設計が不可欠に。

③ 労働力の逼迫

  • 収穫は極端な繁忙の“瞬発型”。世帯内労働だけでは回せず、機械化・共同作業・外部人材の確保が必須。

  • 高齢化で重労働の継続が難しい。摘採機・運搬・選別の動線を見直し、腰と肩への負担を“設計で”減らす必要。

④ 土壌・品種・園地の課題

  • 化学肥料高騰や施肥制限で、有機質の回帰・土づくりに再び注目。

  • 品種の多様化は品質の幅を広げる一方、最適な防除・摘採時期・被覆条件が畝ごとに違う難しさも。


2|工場で起きていること(製造・設備)

① エネルギーと資材コスト

  • 蒸機・乾燥機を回す燃料・電力の高止まり。被覆(覆下)資材や網、防霜・防鳥のネットもコスト上昇。

  • 省エネのための更新投資(インバータ化、断熱、熱回収)が必要でも、回収年数が長く資金繰りの壁に当たりやすい。

② 小ロット・多規格対応の負担

  • シングルオリジン、単品種、発酵茶や紅茶化など多品種少量のニーズ増。

  • ロット分け・トレース・在庫管理の手間が増し、**品質の“再現性”**を保つ運用が難しい。

③ 衛生・安全・トレース

  • HACCP 的な衛生管理、異物混入防止、残留農薬の**MRL(基準値)**対応。

  • 海外輸出や大手取引では記録と証跡が求められ、紙台帳からの脱却が課題。


3|市場で起きていること(販売・事業)

① 価格のミスマッチ

  • 市場平均価格が伸び悩む一方、上物と下物の二極化が進行。

  • 仕入先や流通の都合で、“良いもの”でも適正に評価されないケースが残る。

② 需要構造の変化

  • 急須離れの一方、抹茶・ボトルティー・ティーカクテル・健康文脈など新しい入口は拡大。

  • ただし新カテゴリーは規格・衛生・表示の壁が高く、参入コストがネック。

③ ブランディングと越境

  • 農協・市場任せから、**直販・EC・観光(アグリツーリズム)**へ。

  • 物語・写真・英語対応・配送・カスタマーサポートまで含めると、“農家の仕事”が増え続ける


4|“明日から動ける”現場の打ち手

畑:気候・病害虫へのレジリエンス

  • 防霜の多層化:ファン+黒マルチ+簡易風除け、可搬温湿度ロガーで危険閾値を見える化

  • IPM:フェロモントラップ、被覆下の湿度管理、茶園縁の草・樹種の選定で天敵温存。

  • 土づくり:剪枝くずのチップ化・堆肥化、被覆作物(クローバー・ヘアリーベッチ)で有機物と保水を確保。

労務:繁忙の“瞬発”を仕組みに

  • 共同雇用プール(近隣数戸でのシェア)、摘採機の共同利用カレンダー

  • 収穫〜運搬の動線見直し(斜面にはモノレール・自走運搬車、集積点の固定化)。

  • 学生・地域人材の短期アルバイトには、30分動画の作業eラーニング+現場チェックリストを準備。

工場:省エネ・多品種対応

  • 熱回収・断熱・インバータで“燃やした熱を逃がさない”。

  • ロットID管理(QR)で生葉→荒茶→仕上げまで紐付け。単品種・単畝でも混乱しない台帳に。

  • 小規模発酵ラインの試験スペースを確保し、紅茶・烏龍・発酵茶の**“二の矢”**を育てる。

市場:価値の翻訳と販路

  • シングルオリジンの設計:区画、品種、被覆日数、蒸しの強弱など**“違いの言語化”**。

  • ECの基本整備:淹れ方動画、写真(茶畑・製造・リーフ・水色・茶殻)、2分で強みが伝わる商品ページ

  • 観光・体験:新茶期の“摘採見学+製茶見学+試飲”、秋は“焙煎体験”。一次情報の提供はブランド力に直結。

  • 法人向け:ボトルティー用の抽出適性、抹茶・粉末緑茶の粒度や溶解性などB2B規格表を用意。


5|資金と制度:攻めの投資を可能にする道筋

  • 共同機械リース・協同購入で初期費用を分散。

  • 再エネ活用(屋根ソーラー+蓄電)で昼間電力を平準化、乾燥ピーク時の需要抑制に寄与。

  • 省エネ・輸出・6次化に関連する補助・融資は、“成果(省エネ率・新売上)の数値計画”まで落として申請。


6|輸出・規格対応の勘所

  • MRL・ポジティブリストを市場別に整理し、使用資材と収穫前日数(PHI)を管理表で一元化。

  • 残留検査・水質検査の証跡を英訳テンプレートで常備。

  • バルク・ティーバッグ・粉末など形態別の規格書を用意し、問い合わせへの初動を早める。


7|継承と連携:人が続く仕組みへ

  • 研修受け入れ(短期)→シーズン雇用(中期)→新規就農支援(長期)の**“階段”**を地域で用意。

  • 地域工場・共同乾燥など設備のシェアで小規模生産者の参入障壁を下げる。

  • 若い世代がやりたい直販・体験・デジタルを、上の世代の栽培・製茶の技と重ねる“縦の分業”。


まとめ:課題は重なる。だからこそ“設計”で解く

気候、人手、コスト、市場、規制。どれか一つではなく同時多発で起きています。鍵は、

  1. データで可視化(気象・生育・防除・コスト・販売)

  2. 標準化(作業・記録・品質)

  3. 分担と連携(人・設備・販路)
    の三点を“畑→工場→市場”の一本線でつなぐこと。

お茶は、土地と人の記憶の産物です。違いをつくる畑と、違いを伝える言葉、そして続けられる仕組みが揃ったとき、一本の新茶はようやく未来に届きます。
次の季節に向けて、できることを一つずつ“設計”していきましょう。

 

 

阿波晩茶はオンラインでもご購入できます♪

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未来に繋ぐ阿波晩茶~episode19~

皆さんこんにちは!

Kamikatsu-TeaMateの更新担当の中西です!

 

さて今日は

未来に繋ぐ阿波晩茶〜episode19〜

 

徳島県の山あいで受け継がれてきた乳酸発酵茶「阿波晩茶」。2021年に国の重要無形民俗文化財に指定され、全国から関心が高まっています。どんなサイクルで育ち、いつ摘むのが“旬”なのか。現地資料と作り手の声をもとに、育成期間茶摘み時期を中心にまとめました。


阿波晩茶の一年:育てて、盛夏に摘む

  • 春(4〜6月):新芽の季節
    普通の煎茶なら春の若芽を摘みますが、阿波晩茶は摘まずに育て続けるのが定石。夏に向けて葉を厚く、大きく育てます。厚みのある葉は後の乳酸発酵に向くためです。

  • 初夏〜盛夏(6月下旬〜8月上旬):主な茶摘み期
    収穫の中心は7月。地域や標高で前後しますが、だいたい6月下旬から8月上旬の暑い時期に、人の手で枝をしごくようにして**成葉(大きく育った葉)**を摘み取ります。

「晩茶(ばんちゃ)」の名は、**“遅い時期に摘む”**ことに由来。夏の葉を使う独自の製法が、名称にも刻まれています。


なぜ“夏摘み”なの?——阿波晩茶が育つ理由

阿波晩茶は、摘採 → 茹でる → 擦る(茶摺り) → 木桶に漬けて乳酸発酵 → 天日干しという工程で作られます。発酵を促すには厚手で繊維質のしっかりした葉が向き、気温が高い盛夏は乳酸菌が働きやすい。だからこそ“夏に育て、夏に摘む”のです。

  • 漬け込み期間の目安:おおむね2週間前後〜3週間程度(家や桶によって差があります)。

  • 乾燥:桶出し後は天日干し。台風や夕立を避ける天候読みも重要な“腕”のひとつです。


地域の気候と地形:山の暮らしが育てる茶

主な産地は、徳島県上勝町・那賀町・美波町などの山間部。標高数百メートルの斜面畑で、家ごとに自給中心の小さな単位で受け継がれてきました。山の気候(昼夜の寒暖、夏の高温)と作業環境が、**“夏摘み・発酵”**という個性を支えています。


作り手のカレンダー(目安)

  • 4〜6月:芽吹き。摘まないで育てる(草刈りや畑の手入れ)。

  • 6月下旬〜8月上旬茶摘み本番(ピークは7月)。手摘み後、その日のうちに茹で・茶摺り・漬け込みまで行う家が多い。

  • 発酵(約2〜3週間):木桶で乳酸発酵。

  • 晴天日に天日干し:仕上げの選別へ。

取材記では、7月中旬に上勝町で茶摘み〜漬け込みまでの工程を行い、後日「桶出し→干し→選別」と進める例が紹介されています。盛夏の作業であることがよくわかります。


収穫の“見極めポイント”——現場の目安

  • 葉の厚み・硬さ:薄い若葉は香味は良くても発酵に不向き。厚みとコシが出る夏葉が本命。

  • 天候:漬け込み期は高温が望ましく、乾燥期は晴天が欲しい。作柄は気象の影響を強く受けます

  • 畑の位置:山間部では日当たりや標高差で時期がずれるため、同じ町内でも摘み始めが前後します。


もう一歩深く:阿波晩茶の“いま”

  • **文化財指定(2021年)**で、技術の継承と記録が進み、全国的な注目が上がりました。

  • 海外の発酵茶紹介でも、盛夏に手摘み→桶で乳酸発酵→天日干しという希少な製法が“日本の後発酵茶”として語られています


まとめ:阿波晩茶は「夏を摘む茶」

  • 育成期間春に芽吹かせ、夏まで育てる(春は摘まない)。

  • 茶摘み時期6月下旬〜8月上旬が中心、ピークは7月。厚手の葉を手摘みで収穫。

  • 理由厚葉×高温が、桶の中での乳酸発酵を助け、独特の酸味と香りを生む。

“春に摘まない勇気”と“夏に働く発酵の力”。この二つが重なって、阿波晩茶の季節は出来上がります。次の夏、産地の空気を想像しながら一杯いれてみてください。盛夏の山の匂いと、静かな旨みが、湯気の向こうからやってきます。

 

 

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ご予約分、出荷始まりました!

 

 

 

 

 

 

 

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こんにちは。Kamikatsu-TeaMateの百野です。

皆様お待たせいたしております。

ようやく2025年のお茶の入荷ももぼちぼち入っていきおります。

ただいまゴミ等のより分け、選別作業をして梱包しております。

ご予約いただきましたお客様、先着順ではありますが、順次発送を開始させていただきます。もうしばらくお待ちください。

なお、今回、多数のご注文を頂いておりますため個別での発送確認のメールはご容赦ください。