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未来に繋ぐ阿波晩茶~episode17~

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皆さんこんにちは!

Kamikatsu-TeaMateの更新担当の中西です!

 

さて今日は

未来に繋ぐ阿波晩茶〜episode17〜

 

阿波晩茶は、煎茶や番茶とちがい、乳酸発酵で仕上げる“後発酵茶”。夏の大きな葉を茹でて・揉んで・樽で寝かせて・天日で干す——素材と季節と微生物の共同作業です。ここでは、農園の一年をたどりながら、失敗しない発酵と乾燥の勘どころをまとめます。


1|冬(12–2月):土づくりと来季の骨格づくり

  • 剪定・整枝:翌夏に均一な葉を得るため、畝ごとに高さ基準を決めて更新。

  • 施肥(基肥):前年の収量・葉色・土壌pH/ECを見て設計。

  • 排水・風対策:豪雨溝の通水確認、強風対策の補修。

  • 発酵道具の整備:木樽/ポリ樽・重石・竹簀(たけす)・干し場を点検。樽は湯洗い→乾燥→通風保管が基本。


2|春(3–5月):芽吹きの観察と被覆の見極め

  • 芽勢チェック:畝ごとに芽数・葉厚を見て、夏葉の質を予測。

  • 草生管理:通風と作業性を両立する高さで刈り込み。

  • 病害虫の初期対応:ハマキ・ハダニは畝端と日当たり端から見つけるのがコツ。


3|初夏〜盛夏(6–8月):収穫と“樽入れ”が主戦場

3-1 収穫(刈り取り)

  • 狙うのは“夏葉”:厚みのある大きな葉を中心に。雨直後は水を含み過ぎるため一呼吸置きます。

  • 受け入れ記録:畝・日付・天気・葉齢をロット化(後の味の振り返りに効く)。

3-2 前処理(茹で・揉み)

  1. 大釜で茹でる:葉がやわらかく色が鮮やかに変わるまで。

  2. 水切り→揉捻(じゅうねん):余分な水を切り、葉脈をほぐして菌の足場を作る。

    • 揉み不足=発酵が入りづらい/揉み過ぎ=粉が出やすい。中庸を狙う。

3-3 樽詰め(嫌気発酵)

  • ぎゅうぎゅうに詰める→布→重石空気を抜くのが最重要。

  • 期間:ふつう数週間。香りが乳酸系に変わり、色が落ち着いてきたら“樽明け”の合図。

  • 管理

    • 清潔:樽・布・重石は湯洗い・天日が鉄則。

    • 温度:高すぎは“においだち”が荒く、低すぎは鈍る。納屋の通風で整える。

    • 記録:pH/匂い/色を日誌に。pHは緩やかに下がっていくのが良い傾向。


4|晩夏〜初秋(8–9月):天日乾燥と仕上げ

  • 樽明け→ほぐし:塊をやさしく解き、竹簀に薄く広げる

  • 天日干しからりと晴れた日を待つ。夕立・夜露は大敵なので取り込み動線を先に段取り。

  • 乾きの見極め折ると“パリッ”と音、手触りが軽く、香りが酸×枯れ葉のバランスに。

  • 選別・袋詰:茎や極端な欠片を弾き、ロットごとに封緘。遮光・低湿で保管。


5|秋(10–11月):合組と検品

  • 合組(ブレンド):畝や樽の違いを合わせ、味の“柱”を通す。

  • 官能検査:湯気の香り(立ち香)・口当たり(酸の輪郭)・後口のきれ(渋の余韻)を見て、ロットノートに記録。


6|発酵を外さないための“現場の心得”

  • 嫌気を崩さない:樽詰め直後の空気の道を作らない(押し直しOK)。

  • 水切りを侮らない:過多な水分は“においの重さ”に直結。

  • 清潔第一:樽と布は年次で総点検。においの移りを避ける。

  • 天候待ちの勇気:乾燥は太陽>機械。晴天を狙うほうが結局うまくいく。


7|KPIとトレーサビリティ(簡易フォーマット)

  • 収穫日/畝/天気/葉齢

  • 茹で時間/揉み強度メモ

  • 樽番号/詰日/pH推移/樽明け日

  • 乾燥日数/水分の目安(手感覚+重量)

  • 試飲ノート(酸・旨・渋・香)
    → ロットごとの“勝ち筋”が見え、翌年の微調整が早くなります。


8|よくあるつまずきと処方箋

  • 香りが重い → 水切り不足/樽の締めが甘い。次回は揉み後の滞留短縮詰め直しを徹底。

  • 酸が尖る → 発酵温度が高すぎ/期間オーバー。風通し樽場所を見直す。

  • 粉っぽい → 揉みすぎ/乾燥の伸ばし不足。厚みを均一に干す。


阿波晩茶づくりは、畑の段取り×樽の嫌気×太陽の時間。一年の仕事をリズムに乗せ、清潔・記録・天候待ちの三点で外さない。これがうちの答えです。

(見学や体験の受け入れは時期限定。樽入れ期・樽明け期に合わせてご案内します。)

 

 

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