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月別アーカイブ: 2026年1月

未来に繋ぐ阿波晩茶~episode28~

皆さんこんにちは!

Kamikatsu-TeaMateの更新担当の中西です!

 

~伝統を守り抜くために~

 

阿波晩茶は、手間のかかる発酵茶です。
7〜8月の短い期間に、茶摘み、茶茹で、茶摺り、漬け込み、天日干し、選別まで進み、多くが手作業で、昔ながらの道具が使われてきたと説明されています。

だからこそ、続けるには覚悟が要ります。
一方で、続けるためには“工夫”も必要です。

この回では、阿波晩茶農家が誇りを保ちながら、どんな課題に向き合い、どう未来へ渡そうとしているのかを、できるだけ具体的に整理します。


1. 夏の集中作業は、体力だけではない「総合力」の仕事

阿波晩茶づくりは夏に集中します。手摘みで数日から場合によっては二週間以上かかることがある、という説明もあり、作業量の大きさがうかがえます。
そして仕込みの日は、茶茹で、茶摺り、漬け込みを一日で行う流れが示されています。

この工程は、力仕事であると同時に、段取りの仕事です。
釜の火、湯の状態、茶葉の扱い、摺りの加減、踏み込みの密度、密閉の確実さ。発酵の方向性は、こうした積み重ねで決まります。嫌気的に乳酸発酵を促すために、空気を抜く意図が工程として説明されているように、理屈が分かったうえで“所作”が必要になります。

農家が誇りを持つのは、毎年の条件が違っても、家の味として成立させる総合力を持っているからです。単に古い方法を残しているのではなく、毎年「今年の茶」を見て、同じ本質に着地させる。これは熟練の技術です。


2. 木桶、茶摺り舟、竈――道具を守ることは、文化を守ること

阿波晩茶の工程では、巨大な木製桶に漬け込み、踏み込んで密封し、重石を積むといった手法が説明されています。
また、茶摺りでは「茶摺り舟」を使った手作業が続けられているとされます。

これらの道具は、単なる器具ではありません。
道具があるから工程が成立し、工程があるから技術が伝わり、技術があるから味と文化が残る。つまり道具は、伝統の“記憶媒体”です。

しかし木桶は手入れが必要です。保管の仕方ひとつで寿命が変わります。茶摺り舟も、使い続けるほどに手になじみます。竈や釜周りも、現代の設備とは違う癖があります。
だから農家は、茶葉だけでなく、道具も守っている。ここに、伝統を守る誇りの具体があります。


3. 重要無形民俗文化財の指定は「続ける理由」を社会と共有する装置

阿波晩茶の製造技術が、上勝町・那賀町・美波町などに伝承される民俗技術として重要無形民俗文化財に指定されたことは、行政資料でも確認できます。
指定の意義は、外からの評価というより、内側の人たちの「続ける理由」が言葉になった点にあります。

伝統は、当事者だけの努力では維持が難しい局面が必ず来ます。
手間がかかる、収量が安定しない、担い手が減る、生活様式が変わる。そうした波の中で、指定は「これは地域にとって残す価値がある」という合意形成を助けます。

そして、保存会などの枠組みが明示されていることも大きい。
個人の努力だけでなく、地域の仕組みとして守る段階へ。ここで農家の誇りは、個人の腕前から「共同体としての継承」へと広がっていきます。


4. “家の味”を守りながら、外の世界へ伝える難しさ

阿波晩茶は、家ごとに自給中心で作られてきたという背景があります。
これは大きな魅力である一方、外へ伝えるときに難しさも生みます。なぜなら、画一的な正解がないからです。

伝統を守り抜く誇りとは、「唯一の正解を押しつけること」ではなく、家ごとの違いを尊重しながら、本質を共有することです。たとえば本質は次のような要素に整理できます。

  • 盛夏に成長した葉を使うという季節性

  • 茶葉を茹で、摺って傷をつける工程の意味

  • 木桶に漬け込み、空気を抜いて嫌気的に乳酸発酵を促すという考え方

  • 天日干しと選別まで含めて品質を仕上げる手仕事

この本質を外部に丁寧に説明できることが、伝統を未来へ渡すうえで重要になっていきます。


5. 未来へ渡すための現代的な工夫:誇りを折らない「続け方」

伝統は、精神論だけでは続きません。
阿波晩茶農家が誇りを守り抜くには、「続けられる形」に整える工夫が不可欠です。ここでは一般論として、伝統の本質を損なわずに取り入れやすい工夫を挙げます。

(1)工程の見える化と記録

発酵は目に見えにくいからこそ、気温、仕込み日、桶の状態、発酵期間、干しの条件などを記録しておくことで、経験の共有がしやすくなります。これは家の味を消すためではなく、次の世代が学ぶための土台になります。

(2)安全と衛生の基本を整える

伝統的工程の核心は「木桶での嫌気発酵」や「茶摺り舟の手仕事」にあります。
その核心を守りながら、作業場の整理や清掃、乾燥場所の管理など、現代的な衛生の基礎を整えることは、外部に伝える際の信頼にもつながります。

(3)共同作業の再構築

茶摘みは家族や親類が中心で、必要に応じて近所や知人の手も借りるとされます。
この“助け合い”を、無理のない形で続けることが、担い手不足への現実的な対策になり得ます。手伝いが入る日を決める、役割を分ける、道具の共有ルールを作るなど、コミュニティ設計が鍵になります。

(4)体験や対話で価値を伝える

阿波晩茶は、製法を知るほど味の感じ方が変わるお茶です。
摘む、茹でる、摺る、漬ける、干す――工程の意味を伝えることで、飲み手は「安さ」ではなく「背景」に価値を見出すようになります。結果として、伝統が経済的にも支えられやすくなります。


6. 農家の誇りの核心は、「自分の代で途切れさせない」覚悟

重要無形民俗文化財に指定されたという事実は、外側からの光です。
けれど最後に伝統を守るのは、毎年夏に茶葉を摘み、釜の前に立ち、茶を摺り、桶に漬け、干し上げる人の手です。

「今年も作れた」という小さな達成が積み重なり、伝統はつながっていきます。
誇りとは、過去を飾る言葉ではなく、暑い季節にもう一度立ち上がる力です。家の味を守りながら、地域の文化として次へ渡す。その覚悟が、阿波晩茶農家の背骨になっています。


伝統を守る誇りは、変えずに残すことではなく、続けられる形で渡すこと

阿波晩茶は、盛夏の葉を摘み、茹で、摺り、木桶に漬け、嫌気的に乳酸発酵を促し、天日干しと選別で仕上げるという、他に類例の少ない伝統技術として評価されてきました。
そしてその技術は、重要無形民俗文化財として、地域の文化そのものとして位置づけられています。

誇りは、守り抜くための工夫と一体です。
今年も作り、来年へ渡す。人と道具と山里の季節を、途切れさせない。
阿波晩茶農家の誇りは、その静かな継続の中にあります。

未来に繋ぐ阿波晩茶~episode27~

皆さんこんにちは!

Kamikatsu-TeaMateの更新担当の中西です!

 

~「樽漬け発酵茶」の誇り~

 

阿波晩茶は、徳島県の山間部で受け継がれてきた、乳酸発酵による後発酵茶です。茶葉をいったん熱処理したうえで木桶に漬け込み、空気を抜いて嫌気的に乳酸発酵を進め、天日で干し上げる――この独特の製法が、地域の暮らしの中に深く根を下ろしてきました。

この製造技術は、上勝町・那賀町・美波町などに伝承される民俗技術として、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
それは「特別なお茶」だからというだけでなく、家ごとに伝えられてきた手仕事、昔ながらの道具、山里の暮らしの知恵が、いまも息づいているからにほかなりません。

本記事では、阿波晩茶農家が「伝統を守り抜く誇り」をどこに感じているのかを、製法の具体とともに丁寧に言葉にしていきます。


1. 阿波晩茶は「山の暮らし」そのものから生まれた

阿波晩茶の産地は、四国山地の山間地に広がります。急峻な谷、点在する家々、限られた耕地。そうした条件の中で、畑作を基本とする暮らしが長く続き、周辺の山林には茶の木が多く自生してきたとされます。

この地域で阿波晩茶は、もともと「家で飲むためのお茶」として、家ごとに自給中心で作られてきました。
売るための商品というより、家の一年を支える生活の一部。だからこそ、作り方は画一的ではなく、家ごとの道具、家ごとの段取り、家のリズムの中で守られてきたのです。

この「生活と地続き」であることが、阿波晩茶の伝統の強さであり、農家にとっての誇りの源泉になっています。


2. 盛夏に摘む葉、そして一日で一気に仕込む「夏の総力戦」

阿波晩茶づくりは、夏に集中します。製造は主に7〜8月に行われ、茶摘みから、茶茹で、茶摺り、漬け込み、茶干し、選別まで、工程が連なります。

特に特徴的なのは、茶摘みが盛夏の時期に行われる点です。一般的な緑茶のように新芽を摘むのではなく、成長した葉を使うことに特色があると説明されています。
この「遅い時期まで成長した葉を使う」という意味合いから、現在は「阿波晩茶」と表記されるようになった、という整理もあります。

そして、阿波晩茶の現場には、毎年必ず訪れる緊張感があります。
茶摘みは手摘みで、家族や親類が中心となり、場合によっては近所や知人の手も借りながら進めるとされています。
摘んだ茶葉を仕込む日は、茶茹でから漬け込みまでを一日で行う流れが示されており、ここがまさに「総力戦」です。

暑さ、時間、段取り。少しでも油断すると、仕込みが遅れ、発酵の立ち上がりや品質に影響する。だからこそ、家の中の役割分担、道具の準備、火の管理、動線まで含めて、毎年積み上げてきた知恵が活きるのです。


3. 「茶摺り」と「漬け込み」――見えない発酵を立ち上げる職人の感覚

阿波晩茶の核となるのが、茶摺りと漬け込みです。

資料では、茶茹での工程で、大釜に茶葉を入れ、又木で押し込みながら茹で、次の茶摺りで茶葉に傷をつけて発酵を促す、という流れが説明されています。さらに、茶摺りには「茶摺り舟」を用いた手作業がいまも続けられているとされます。
ここに、伝統が「技術」として生きている姿があります。

そして漬け込み。茹でて摺った茶葉を巨大な木桶に入れ、空気が入らないよう踏み込み、葉や石などで押さえ、密閉して発酵を促す――嫌気的に乳酸発酵を進めるための工夫が、工程の意味として説明されています。

重要なのは、発酵が「目に見えない」ということです。
温度、湿度、茶葉の状態、踏み込み具合、桶の扱い。数値だけで割り切れない要素が多く、最後は人の観察と経験がものを言います。
農家が誇りを感じるのは、まさにこの部分です。見えない微生物の働きを、段取りと所作で立ち上げる。先人から受け取った手の感覚を、今年の茶葉に合わせて微調整する。伝統とは、過去のやり方を固定することではなく、毎年の条件の違いに合わせて「同じ本質」を再現する力でもあります。


4. 天日干しと選別――最後の仕上げに現れる、作り手の性格

発酵が進んだ茶葉は、晴天に合わせて取り出され、筵などに広げて天日で乾燥させる工程が示されています。
天候を読むこと、乾き具合を見極めること、乾燥中の扱いを丁寧にすること。ここでも、作り手の注意深さが品質に直結します。

さらに最後に、茶の実や割れ葉などを取り除き、篩や箕、手作業で選別し、形を崩さないように詰める、という仕上げが説明されています。
この地味な工程に、農家の誇りが宿ります。
「良いものを、良い状態で残す」。
大量生産では見落とされがちな“最後のひと手間”が、阿波晩茶の価値を支えています。


5. 重要無形民俗文化財に指定されたという「背中を押される感覚」

阿波晩茶の製造技術が重要無形民俗文化財に指定されたことは、農家にとって単なる称号ではありません。
それは、自分たちの手仕事が「地域の文化そのもの」として認められたということ。言い換えれば、祖父母や親世代が守ってきた営みが、社会的な価値として言語化された瞬間でもあります。

同時に、指定は責任も生みます。
伝統は、残っているだけでは守れません。作り手が減れば、桶も道具も、所作も消えてしまう。だからこそ、農家の誇りは「誇れること」だけでなく、「守り続ける意思」へとつながっていきます。


阿波晩茶の誇りは、生活と技術を途切れさせないこと

阿波晩茶農家が守り抜く伝統の誇りは、派手な物語ではなく、夏の暑さの中で積み上げる段取り、手の感覚、家の共同作業にあります。
盛夏の葉を摘み、茹で、摺り、桶に漬け、天日で干し、選別する。
その一連が、山里の暮らしを形づくり、地域の文化として評価されてきました。

一杯のお茶は、ただの飲み物ではありません。
それは、その家が今年も伝統をつなげた証であり、次の世代へ渡す約束でもあります。

2026年 新年あけましておめでとうございます。

2026年新年あけましておめでとうございます。

旧年中は多くのお客様に上勝晩茶をお届けできありがとうございました。

今年もたくさんの方とご縁がありますよう心よりお待ちしております。

 

さて、昨年よりTV放送の影響で長らく晩茶が品切れになっておりましたが、

昨年中に何とかご予約分を皆様にお届けすることができました。

たくさんの方から再販についてのお問い合わせをいただいておりましたので、

ご注文の受付を再開したいと思います。

ただ、数に限りがございます。一人でも多くの方に上勝晩茶をお届けしたく、

お一人様500gまでのご注文とさせていただきます。

ご理解のほどよろしくお願いいたします。

また、近年の物価高等や生産者の高齢化による生産量の減少などの影響で価格変更に踏み切ることになりました。

2026年度産のものにつきましては春以降にご予約の受付を考えておりますのでそちらで再度ご案内したいと思います。

再販分の価格は100g当たり1,296円(税込)→1,620円(税込)となります。

どうぞよろしくお願いします。

Kamikatsu-TeaMate 百野大地